* 「春のおすそ分け」

恒例の月イチギリギリ更新(笑)ですが、
今日はメインPCのビルダーが使えない為(姪っこギャング襲来・笑)
サブPCからブログの方へUPしてます
後日サイトへUPしますね。






「春のおすそ分け」  

※ 「フィルムの中のアリバイ」が軸となってます。




頭上いっぱいに広がる満開の桜。
その桜の間から差し込むキラキラと輝く太陽の光を浴びながら、
めいっぱい春の幸せを感じている。
でも去年の今頃は…

1年前の桜がまだ蕾だった頃、
私は待ち合わせの場所である日比谷に向かっていた。
家を出るのが少し遅くなってしまったので早走りになりながらも、
途中で花屋さんの前で気になる前髪のハネをちょこっと直したり、
それまではいつもの日常だった。
道の向こう側へ渡る為、前方の横断歩道を渡ろうとした時、
どこからか急ブレーキの音が激しく聞こえてきた瞬間、
物凄い衝撃を身体に感じると共に目の前が真っ白に。
何が起こったのか、私には全く解からなかった。

その先はどこまでも果てしなく続く暗闇の中にいたんだと思う。
前も後ろも上も下も、
どこにいるのかさえ、自分がどうなっているのかさえも解からない。
どうしようもなく不安で怖くて、思わず声を出して助けを呼ぼうとしても声が出ない。
このままここで自分は消えてなくなってしまうんじゃないかと、
ココロが押しつぶされそうになる。

これからどうしていいかも分からず、ただ立ち尽くしていると、
左手の掌がほんのりと温かくなってきた。
すると今までの押しつぶされそうなココロの不安が少しずつ消え、
ぽかぽかと安心のココロが広がる。
どんな状況でも大丈夫だと確信できる、あの時と同じ気持ち。
そう、はじめちゃんがそばにいてくれる時と同じに。

そこでハッと目が覚め、ぼんやりと白いものが見えた。
意識が徐々にハッキリしてくると、それは見慣れない部屋の天井だった。
自分の部屋ではない。
じゃここはどこなんだろう?
そこがどこだか解かったのは、自分の腕に点滴がされていたということ。
そっかここは病院なんだ。
でも何で私は病院にいるんだろう?
様子を見にきた看護士さんに事情を訊いてみると、交通事故に遭ったのだという。
目の前が真っ白になった時に事故に遭ってたんだ。
それでこうして病院のベッドに横たわっている…
はじめちゃん、きっと心配しているんだろうな。
もう大丈夫だからって伝えとかないと。

でもまた徐々に瞼が重くなってきた。
そしてまた深い眠りの中へと誘われていく…
ここから覚めては眠り、眠っては覚めを繰り返した。
投与されていた薬の影響らしいけど、
眠っている間、左手の掌はいつもぽかぽかと温かかった。
その温かさのおかげで、眠っている間も不思議と安心していられた。
その後、点滴も外れ意識がハッキリするようになった頃、
いつも感じていた左手の掌の温かさの真実を知った。
掌の中には桜の花びらがたくさん。
病室からは残念ながら桜の花は見ることができなかったけれど、
この掌にある桜の花びらで春を感じることができる。
春のおすそ分けって感じかな。

てっきり看護師さんが看護士が春をプレゼントしてくれたのかな?と思っていたのだけれど、
実は、はじめちゃんがお見舞いに来てくれた時に、掌に握らせてくれていたのだと。
そしてその手をはじめちゃんの手で包み込んで、繰り返し語りかけてくれてたって。
目が覚めて元気になったら桜を見に行こうって。
その話を聞いて、あのいつも感じていた掌の温かさはこれだったんだなって。
だから暗闇の中でも安心を感じることができたんだね。
学校が終わった後、必ずお見舞いにきてくれてたはじめちゃんに、
ありがとうって感謝の気持ちを伝えたんだけど、照れて知らないの一点ばりだったけどね。
そうして無事に退院できたけど、
その頃には桜の季節は終わっていたので見られなくて残念だったけど、
掌の中の桜の花びらは栞にしてちゃんととってあるんだ。
いつでもあの時の大切な温かさを感じることができるように、忘れないように。
それと、はじめちゃんが言ってくれたこと。
剣持警部がお見舞いにきてくれた時にこっそり教えてくれた。
私をひき逃げした犯人に対して、
「かけがえのない人を失うようなことになったら…」って言ってくれたこと。
涙が出そうになるほど嬉しかった。
そのことをはじめちゃんに言っちゃうと、また否定されそうだから私は知らないことにしてる。
でもその気持ちはちゃんと私に伝わってるからね、はじめちゃん。


…そんなことを目の前に広がる桜を見ながら、ぼんやりと思い出していると、
心配そうに?はじめちゃんが覗き込む。


「お前、大丈夫か?ボーっとして熱でもあるんじゃねーの?」
「熱なんかないってば。去年はお花見出来なかったから今年は心ゆくまで満喫してたの」
「…去年は大変だったもんなって、お前あの時のことまだ聞かせてもらってねーぞ!」
「あの時のことって?」
「草太とデートだったんじゃねーか?」
「デートなんかじゃないもん。演劇のチケットがあるからって誘われただけだもん、
 一応演劇部だし。勉強になるかなーって」
「いいや絶対違う!あれはデートに決まってる!」
「もういいじゃない!そんな前のことなんて。それより目の前の桜を堪能しようよ♪」
「いーや!今年こそ絶対に吐かせて真実をつきとめてやる!じっちゃんの名にかけて!」
「しーつーこーい!もう真実は語って謎はすべて解けているんだってば!」

はじめちゃんからのしつこい追求から逃れようと小走りになった後、
小石に躓いて転びそうになった。
けど転ぶことはなかった。
間一髪、はじめちゃんがしっかり私の手を掴んでくれていたから。


「ったく、お前ってまったく危なっかしーよな。退院する時も派手にコケてたしさ」
「しょうがないでしょー。こんなところに小石があるんだもん。それに桜を見るのに上ばっかり見てないといけないし」
「これだけ綺麗だと思わず見惚れてしまうもんな。ま、今日は特別にこうして手繋いどいてやるから安心して見惚れてていいぞ」
「いいよ、子供じゃないんだし大丈夫だって」
「って、さっきも転びそうになったじゃないか」
「そりゃそうだけど。あれははじめちゃんがしつこく追及しようとするからで…」
「もうそれはいいから花見の続きしようぜ」
「…そうだね」


と、話が落ち着いた後で再び頭上の桜に視線を移す。
今年は去年、掌に感じた時よりも遥かに春を感じてる。
はじめちゃんの繋いだ手の中に…







最後までお読みくださり、ありがとうございます

2013.03.31 Sunday * 23:49 | はじめと美雪 | comments(0) | -
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2019.08.09 Friday * 23:49 | - | - | -
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